「老後2000万円問題」や「年金は本当にもらえるのか?」といった言葉が世間に出回るようになって久しいですが、「投資をしなきゃ」と感じる一方で、なかなか行動に移せない方も多いのではないでしょうか。
今回は、なぜ今、資産形成や投資が必要なのか——「生涯年収」と「生涯支出」という視点から、一緒に考えてみましょう。
一生で稼げるお金=生涯年収
まず、「生涯年収」とは何でしょうか?
一般的に、会社員として定年まで働いた場合の生涯年収は、およそ2億〜3億円と言われています。もちろん学歴や業種、男女差、雇用形態などによって幅はありますが、多くの人にとってはこの2〜3億円が一生で稼げる金額の上限です。
以下は、総務省の「家計調査年報(家計収支編)2023年」からの、勤労者世帯における年齢別の平均可処分所得(手取り)です。
世帯主の年齢階級 | 月あたりの可処分所得 |
40歳未満 | 478,641円 |
40~49歳 | 532,453円 |
50~59歳 | 546,951円 |
例えば、22歳から60歳までの38年間働き続けたとした場合の合計金額は約2億2700万円です。
※なお、60歳以降は年金などで収入が発生しますが、将来の年金受給額は制度見直しの影響を受ける可能性があるため、本記事では含めていません。
この「約2億円」という金額を人生でどのように配分していくかを考えなければなりません。
次に一生で人はどのくらいの支出をするのかを見ていきましょう。
一生で使うお金=生涯支出
では、一生でどれくらいお金を使うのでしょうか?
同じく家計調査から、二人以上の世帯における年齢別の平均支出額を見てみましょう。
世帯主の年齢階級 | 月あたりの消費支出 |
40歳未満 | 272,468円 |
40~49歳 | 323,660円 |
50~59歳 | 348,025円 |
60~69歳 | 306,476円 |
70歳以上 | 249,177円 |
これをもとに22~85歳までにいくらかかるかを計算すると約2億2400万円になりました。
生涯年収-生涯支出=300万円
つまり、「稼げる金額=生涯年収」と「使う金額=生涯支出」が、ほぼトントンかもしくは足りなくなるということが見えてきます。
不足する分をどう補うか?

ここまで見てきたように、生涯年収と生涯支出の差額はわずか、もしくはマイナスになることも考えられます。つまり、「何もしなければギリギリ」「ちょっとした予期せぬ支出で赤字」という人生設計になりかねません。
たとえば、病気やケガによる収入減少、親の介護、子どもの教育費、家の修繕など、人生にはイレギュラーな出費がつきものです。それに加えて、物価上昇(インフレ)や年金の減少など、将来的な不確定要素も多く控えています。
では、この「足りないかもしれない未来」に備えるにはどうしたらいいのでしょうか?
その答えが「投資」や「資産形成」です。※もちろん収入を上げると言う選択肢もあります
投資と聞くと、「損をしそう」「難しそう」といったイメージを持つ方も少なくありません。ですが、ここでいう投資とは、ギャンブル的な値動きを追いかけることではなく、「時間を味方につけた、堅実な資産形成」のことです。
具体的には、収入の一部を“未来の自分”のために預けておく感覚に近いかもしれません。今すぐに使う予定のないお金を、将来の安心のために「育てていく」行動が、投資の本質です。
守りと攻め、両方のバランスが大切
ただし、いきなり投資に全振りするのは危険です。最初に必要なのは、生活を安定させる「守りのお金」を整えること。
たとえば、急な出費や収入減が起きた時でも冷静に対応できるよう、生活費の数ヶ月分を現金で確保しておく「生活防衛資金」は、資産形成の土台になります。
※生活を守るための「守りのお金=生活防衛資金」については、こちらの記事で詳しく解説しています
守りの資産形成:まずは「生活防衛資金」から始めよう
そしてその上で、将来に向けてお金を“育てる”ための「攻めの資産形成」に移行していきます。
最近では、税制面で非常に有利な制度である新NISAを活用した投資信託の積立が、多くの人に支持されています。新NISAは、長期・分散・積立という資産形成の基本を自然に実践できる仕組みになっており、投資初心者にとっても始めやすい制度です。
「投資」による資産形成の可能性について簡単ですが、こちらの記事にまとめてあります。
新NISAで始める攻めの資産形成:長期・分散・積立で未来を変える
ただし、投資には必ずリスクが伴います。元本が保証されているわけではなく、運用結果によっては損失を被る可能性もあることを忘れてはいけません。
だからこそ、制度や商品の仕組みをよく理解したうえで、自分の目的やリスク許容度に合った方法を選び、最終的には自分の意志と責任で判断することが不可欠です。
焦らず、少しずつ知識と経験を積み重ねていきましょう。
投資=お金に働いてもらうということ
「投資」というと、「難しそう」「損しそう」とネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、投資とは一言で言えば「お金に働いてもらうこと」。
たとえば、あなたが月3万円を毎月投資して、年利5%で30年間運用したとすると、最終的には約2500万円(元本1080万円)になります。
これが、「時間」と「複利」の力です。収入が大きくなくても、早いうちから資産形成を始めれば、将来の安心につながります。
利回りの仕組みや複利の考え方は、こちらの記事で詳しく紹介しています
利回りとは?リスクとリターン、複利についても解説!
まとめ|「何もしない」が一番のリスクになる時代
今の日本はインフレが進み、物価が上がり、預金金利はほぼゼロ。「銀行にだけ預けておけば安心」な時代はすでに終了しています。
生涯年収と生涯支出を見比べると、「何となく働いて、何となくお金を使っているだけでは将来が危うい」という現実が見えてきます。
だからこそ、今のうちに知識を身につけ、「お金に働いてもらう仕組み=投資」を取り入れていくことが大切です。
小さな一歩からでも、確実に未来は変えられます。この記事が、あなたの資産形成の一歩となれば嬉しいです。
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